いかにゴミ問題を「自分たち」ごととするか #9

私たちは日々ゴミを出して生活しています。ついつい、ゴミについては人ごとのように考えがちですが、改めてゴミ問題と向き合うことから始めてみませんか?
江口晋太朗 2021.06.10
読者限定

2015年9月の国連総会で採択されたSDGsは、温暖化や気候変動といった問題に向け、政府や企業含めた多くの組織がその目標達成に向けて動き出していることは、みなさんもご存じかとおもいます。

SDGsを達成するには政府の意思決定から企業のビジネスモデル、組織体制、事業のあり方そのものが根底から問われています。

その先には、人類が生きていくための地球環境を保つことにつながっており、一企業や私的なものから、より、コモン的、公共的な視座で活動していくことが求められているともいえます。

もちろん、そこには、行き過ぎた資本主義のあり方を見つめ直すといったことも含まれており、昨今ではそうした議論も盛んに行われています。

しかし、環境問題、地球規模のことを個人レベルで想像することは難しいことかもしれません。

個人がまずはできるの一つに、家庭ゴミを向き合うことがすぐにできる一歩です。

日々のゴミの行方はどこに?

日々、私たちは様々なゴミを出しています。食料品に(時に過剰に)包装されたプラスチック、生ゴミ、壊れて使えなくなった備品、ジュースの缶やペットボトル、新聞紙や段ボール。そうしたゴミの行き先について、私たちはどこまで「想像」できているだろうか。

都心部に住んでいると、地域ごとのゴミ収集所、マンションであればマンションに備え付けられたゴミ集積場にゴミを出したら、その数秒後にはゴミを出したことすら忘れてしまうくらい、「ゴミを出すこと=ゴミ収集所にゴミを置いて終わり」と思ってはいないだろうか。

ゴミを出した後のことについて想像しない、もっといえば、その先のことは知らぬ存ぜぬ、アウトソーシングして、気がついたら”誰か”が収集し、”誰か”が適切に処分してくれると思いがちです。

それを下支えしているのが公共サービスであり、私たちの税金によってゴミが毎週の指定された曜日に適切に収集され、焼却所まで運搬され、処理されているという、当たり前の事実に、私たちはついつい意識が向きずらくなっています。

そんなゴミ収集も地域によって様々で、地元福岡県の福岡市では、ゴミの夜間収集を行っている珍しい自治体です。

その理由は、朝のゴミの異臭問題や、夜間によるゴミ収集車が行き交うことによる防犯などにも役立っているというものです。

出されたゴミが適切に処分され、再利用できるものは再利用しやすいように、燃えるゴミ、資源ゴミ、といった形で分別することは必要な取り組みです。

ゴミを少しでも出さないように努力すること、いわゆる「ローウェイスト」「ゼロウェイスト」を目指すことがある種の究極の目標で、特にプラスチック問題は企業側の努力とともに私たちにおいても選択すべき行動といえます。諸外国では、包装せずに量り売りやマイボトルを持参して飲料を購入する店舗も増えてきました。

昨今では生ゴミをそのまま捨てるのではなく、堆肥にするコンポストを始める人も増えてきました。振り返ると、かつて農家だった実家では、祖父や祖母が炊事場にある三角コーナーに生ゴミを貯めて、裏手口にある容器に生ゴミを貯めているのを思い出しました。

ゼロウェイストに取り組むフランスで開設した物々交換マーケット

ゼロウェイストに取り組むフランスでは、2017年にオープンしたSmicval Marketと呼ばれる廃棄物処理センターが人気を博しています。

Smicval Marketでは、不要になった廃棄物を持参すると、代わりに他の人が廃棄した物を持ち帰ることができる、ある種の物々交換マーケットです。普通のスーパー同様、雑貨コーナーや木材・資材といったコーナーに物品が分類され、指定された場所に直接廃棄し、別の棚やコーナーから持って帰ることができます。時には、物品の一部(机の脚だけ欲しい、蝶番だけ、木材の一部など)を持ち帰ることもできます。

Brut Japan
@brutjapan
【物々交換マーケット SMICVAL】
「ゴミを減らし、住民同士の絆を深めること」。南西フランスの物々交換マーケットでは、市民が不要になった廃棄物を持ち込み、代わりに欲しい物を持ち帰ることができる。要らなくなった物を捨てずに、誰かが必要としていると考えるだけで、ゴミ問題の解消に繋がる。
2021/03/28 09:00
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Smicval Marketは、もとはゴミ捨て場だった建物や場所を改装しオープンしたものであることも特徴で、ゴミ捨て場という、普段なかなか寄りつかないような場所を地域に開かれた物々交換マーケットとすることで、地域住民らのリサイクル意識を高めることにもつながっています。

誰かにとってはゴミや使わなくなったものでも、他の誰かにとっては有意義な物となる、サーキュラー的な思想がそこにはあります。ゴミにして終わりという個人の所有財から、ある種の公共財へと転換することといえるかもしれません。

日本でも、フリマアプリなどが盛んで、巨大な中古市場が経済されています。特に、サイクルの早い子供関連の服やグッズはすぐにフリマアプリに出すことで循環することが子育て中の人らのある種のライフハック的なものとして定着しています。もちろん、中古市場そのものも良いですが、貨幣経済を介すだけではない、Smicval Marketのように誰かへのギフトとして廃棄する(ある種は寄付する)ことで循環することもあるように思えます。

埋立処分場の問題から、リサイクルの町へと大転換した大崎町

ゴミを出さないこと、出たゴミも少しでも循環させるための方法や仕組みを構築することで、ある種のコモンズが構築されていく。

そんな考えを、20年以上前から実践している地域があります。鹿児島県の大崎町です。

人口1万2000人程度の町は、地域に焼却施設がなく、90年代まで、それまでは大崎町と志布志市で管理している埋立処分場へゴミを運び込まれていました。時代は高度経済成長期、当時の大崎町は燃やせるゴミの概念がなく、家庭ゴミは増える一方でした。

95年に容器包装リサイクル法は制定されるタイミングとあわせて、国の補助金を受けて各地の自治体で焼却施設が建設されていきました。大崎町と志布志市の埋立処分場はすぐさま埋まり、計画内での利用が持たないと判断した自治体は、①焼却施設を新たに建設するか、②新たな埋立処分場を建設するか、③既存の埋立処分場を延命するかの3つの選択肢が迫られていたのです。

焼却施設の建設も新たな埋立処分場も財政問題や埋立処分場に対する住民の反対から、既存埋立処分場の延命を選ばざるをえなくなり、そこから、住民総出のリサイクルに取り組み、少しでもゴミを減らすための努力に向き合い始めました。

そこから約20年が経った現在、大崎町は各家庭ゴミは27品目に分別され、リサイクル率は驚異の83.1%(全国平均は約20%程度)で、2006年以降12年連続日本一となり、2020年度も見事13回目の日本一となりました。

そこには、住民らに対するゴミ焼却所や埋立所を含めた問題に対する危機意識を共有し、何百回となる説明会を開きながら、少しずつ地域住民らに対する理解や行動を促すための取り組みが行われてきました。

未来の大崎町ヴィジョンマップ

未来の大崎町ヴィジョンマップ

大崎町は、今やリサイクルの町として、「サーキュラービレッジ大崎町」ビジョンを掲げ、地域循環のための政策づくりやまちづくりに取り組んでいます。

大崎町と似た自治体としては、2003年に「ゼロウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町も知られています。

上勝町では、2020年までに上勝町で焼却するゴミをゼロにするという目標を掲げ、ゴミは45分別としてリサイクルに取り組み、リサイクル率80%にまで達成するなど、大崎町や上勝町など、各地の自治体で地域住民総出でゴミ問題に取り組む地域が出てきています。

大崎町の取り組みから地域循環を考える

行政、市民とが手を結びながら、以下にして持続可能な地域づくりをするか、ゴミ問題をいかにコモン化させるためのデザインがあるのか、その先にある「自分たち」ごとを目指す地域のあり方について考えてみたく、コモングッドトークvol.3にて、大崎町のサーキュラービレッジを推進する合作株式会社と、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の方々をゲストにお呼びしたトークイベントを開催します。

同協議会は「ゴミのリサイクル」取り組み強化とともに、2030年のSDGs達成、特に資源循環に関わるSDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」において、「使い捨て容器の完全撤廃、脱プラスチック実現」などを重点的に取り組むための活動を行っています。

このトークは、ニュースレター「コモングッドをもとめて」と学芸出版社のがくげいラボによるコラボのもと、「コモングッドトーク」というトークセッションシリーズを定期的に開催するシリーズの一環です。ニュースレターの購読者限定で、イベントレポートも掲載していきます。また、過去のトークシリーズのアーカイブ動画は、学芸出版社が運営するまち座の動画アーカイブにて閲覧することができます。

【イベント概要】
日時|2021年6月21日(月)19:00〜21:00
会場|オンライン(Zoomミーティング)
配信URL|お申し込みいたいだいた方に、peatixメールにてお知らせ致します。
参加費|一般参加:1000円
申込 | https://commongood-talk3.peatix.com/view
定員|100名
主催|株式会社トーキョーベータ、学芸出版社(コモングッドをもとめて×がくげいラボ コラボ企画)

<ゲスト>
鈴木 高祥(すずき・たかあき)|合作株式会社 取締役、株式会社カゼグミ 代表取締役
1981 年水戸市出身。民間企業を経験後、2012年よりフリーランスでファシリテーターの企画に従事。茨城にて、カゼグミを2018年に設立。関係人口づくりのプロジェクト、茨城での複業人材誘致や自治体とのシビックプライド醸成のプロジェクトなど、行政・企業とのアイデアソン設計・運営全般に関わる。合作の一員となることで、茨城、東京、鹿児島の 3 拠点生活に。他、一般社団法人Think the Earth推進スタッフ/一般社団法人Work Design Labパートナースタッフ。

中村 健児(なかむら・けんじ)|大崎町役場 企画調整課 課長補佐、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 事務局長
大崎町生まれ。平成8年に北九州大学を卒業後、鹿児島市の民間企業に勤務。その後、平成10年に大崎町役場に入庁。教育委員会、企画財政課、総務課を経て、平成26年度に企画調整課に配属され、現在、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の事務局長を務める。SDGsに関する業務のほか、地方創生、移住・定住、空き家対策、国際交流、多文化共生等の業務に携わる。現在、47歳。

*以下、購読者限定にて、イベントの割引コードを配布いたします。

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