2025年は国際協同組合年ー持続可能な社会に向けて、国内外で協同組合に関する様々な企画や催しが開催予定です

2030年目標のSDGs実現に向け、2025年を国際協同組合年とした国連決議。世界各地で協同組合の動きが盛り上がりをみせています。
江口晋太朗 2024.07.17
誰でも

2023年11月3日、国連は2025年を国際協同組合年(International Year of Cooperatives. IYC)とすることを宣言し、また、2024年6月20日の国連総会において、ICA(国際協同組合同盟:International Cooperative Alliance)とともに、国際協同組合年のテーマを「協同組合はよりよい世界を築きます(Cooperatives Build a Better World)」と設定し、様々な取り組みを行うことを宣言しました。

国連決議では、世界的に広がる協同組合の世界的影響に光をあてながら、協同組合モデルがさまざまな世界的課題に取り組むための重要な解決策であることを強調しています。その背景には、に掲げる2030年までのSDGsの実現を進めるアクターとして、協同組合の果たす役割が大きいことを示しています。

実は、国連総会が国際協同組合年を制定したのは今回で2回目です。1回目は2012年を国際協同組合年として制定し、貧困削減や雇用創出、社会的統合など協同組合による経済的・社会開発への貢献に光を当てる年としました。

SDGsの制定が2015年9月、SDGsの前進であるMDGsが2000年に制定し2015年を目標に貧困や飢餓、差別の撲滅などの目標を掲げていたことから、MDGsからSDGsへとつながるものとして、国際協同組合年を設定したことがみてとれます。これを継承するのであれば、SDGsが掲げる2030年まで残り5年というタイミングで二度目の国際協同組合年を制定したことも強い意志を感じさせられます。

現在、国際協同組合年(IYC2025)に向けて世界各国で動き出しており、日本でも、国内の協同組合の連携機構であるJCA(Japan Cooperative Alliance)において、「2025国際協同組合年全国実行委員会」が発足し、2025年内をかけて様々なシンポジウムやフォーラムなどの開催、情報発信などに取り組む予定です。

協同組合の国際組織であるICAも、2024年11月25日にインド・ニューデリーで開催されるICAのカンファレンスにおいて、2025年に向けた取組やグローバルにおける連帯の必要性などを語る予定で、2025年に向けた取組を加速させています。

こうした国際協同組合年に至る流れは以前から存在しています。1994年12月、国連総会において1995年7月の第1土曜日を「協同組合の国際デー」(International Day of Cooperatives)とすることが宣言されました。この1995年とは、世界の協同組合の国際組織である「ICA」が設立して100周年を迎えるタイミングでもありました。1994年12月の国連総会でも、協働組合が経済・社会開発に必要不可欠な存在であることを認め、各国政府や国際機関、国内・国際協同組合組織に対して、この国際デーを毎年祝うことを勧告するほどになっています。それ以降、毎年7月の第一土曜日は「協同組合の国際デー」として様々な催しが開催されるほどになっています。

1895年に設立した世界の協同組合の国際組織である「ICA」は、1844年にスタートした協同組合年のはじまりでもあるロッジデールの運営規則や精神が次第に世界に広がってきたで設立されたという経緯があります。1995年の「協同組合の国際デー」 とあわせて、100周年の際にはロッジデールの運営規則や精神をもとにした「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」が採択され、協同組合原則を掲げており、世界の協同組合に対する働きかけを行っています。

そこからさらに30年。2025年はICAの130年設立記念でもあり、今回の国際協同組合年は大きな節目となることでしょう。2025年を節目とする取り組みに、ICAも2023年11月に発表したポジションペーパー「協同組合:持続可能な開発のためのアジェンダ2030を実現するための重要なパートナー」において、ICAから各国政府や開発パートナーに向けた要請などとも連動するものです。

欧州や南米、アジアなどをはじめ、世界各国では持続可能な地域経済やディーセントワークの実現などから、協同組合への理解や認識がますます高まってきています。プラットフォーム経済への広まりとそれらに対抗するために生まれたプラットフォームコーポラティズム(プラットフォーム協同組合)のような取り組みもますます広がりを見せています。

一方、こうした議論は日本では大きな広がりを見せているとはいえない状況です。2025年の国際協同組合年に向けて設立された全国実行委員会のみならず、これまでとは違ったアプローチや取り組みで協同組合の可能性などを議論する場をつくる必要性があると感じます。

現在、すでに国内において以下のイベントが開催を予定しています。

(1)IYC2025キックオフイベント。
日程:2025年2月19日(水)午後、会場:国連大学ウ・タント国際会議場

(2)IYC2025の第103回国際協同組合デー記念中央集会
日程:2025年7月上旬、会場:未定(都内イベントホール)

(3)IYC2025記念シンポジウム「協同組合への期待と展望(仮称)」(全国農業 協同組合中央会が主催する「食料フォーラム」への協賛)
日程:2025年秋

他にも、日本協同組合学会と連携したシンポジウムも2024年10月に開催したり、各地の協同組合や関係組織によるIYC2025に関連したイベントや出版物が発表される予定です。

今年の後半から来年にかけて、協同組合に関係した催しや情報発信がされていくはずですので、ぜひチェックしてみてください。

***

「コモングッドをもとめて」では、取材やリサーチ、原稿執筆、時にはゲストフィー確保を通じて、より良いクオリティのニュースレターが配信できるよう、ぜひともサポートメンバーの登録をいただけると嬉しいです。サポートメンバー限定コンテンツも今後検討していきます。

「コモングッドをもとめて」へのご感想やご質問はTwitterにハッシュタグ「#コモングッドをもとめて」をつけてご投稿ください。また、このレターのリンク付きでご投稿いただけると嬉しいです。

質問や感想は以下の質問フォームから受け付けています。気軽なご連絡やお問い合わせをお待ちしています。

無料で「コモングッドをもとめて」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
OECDの報告書でプラットフォーム協同組合の発展のための法整備や支援体...
読者限定
レジ打ちも座っていいよね? 働く環境を見直すことから見えてくるインクル...
読者限定
新たな経済として注目される「社会的連帯経済」、その背景とは
読者限定
広がるプラットフォーム協同組合、その背景にある雇用と労働の関係 #28...
誰でも
2023年の振り返り:これまでに反響のあった記事と解説、2024年に向...
読者限定
民主的な組織における最適なガバナンスとはーー代表制、参加型、熟議型、そ...
読者限定
ソーシャル・バンクという持続可能な社会のための投資 #25
誰でも
プラットフォーム協同組合を支える法的なガバナンス構造とは #24