新たな経済として注目される「社会的連帯経済」、その背景とは
4月になり新たな年度となりました。年度末、色々と多忙でニュースレターの配信も滞っておりましたが、年度明け、心機一転でリサーチしてきたことなどをみなさんにシェアしていきたいと思います。
テーマとしては「自律協生社会を実現するための社会システム構築」を目指すための様々な概念や手法、世界的な動きなどを抑えていければと思います。そのなかでも、社会的連帯経済という概念やその背景について今回はまとめていきたいと思います。
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新たな経済のオルタナティブとして注目される「社会的連帯経済」
ポスト資本主義への流れにおいて、資本主義でも共産主義でもない、新たな経済のオルタナティブとして「社会的連帯経済」という言葉が生まれています。これまでにも何度か言葉としは紹介をしてきました。今日は、この「社会的連帯経済」という言葉の意味や背景、その概念が捉えている視座について解説していきます。
社会的連帯経済とは、社会で活動する一人ひとりに人間に着目し、民主的で参加型のガバナンスや自発的な協力が重要視されています。民主的な運営や労働者・消費者・地域住民といった人間の生活や営み全般や自然・環境を重視した経済活動を行うもので、SDGsへの高まりやディーセントワークのような雇用と労働の問題、持続可能な社会づくり、地域経済循環、自然環境保全、住民自治や市民社会の醸成といった民主主義社会を構成することで生まれる新たな経済圏と言えます。つまり、社会的連帯経済が実現する社会とは、公平で安心安全な経済、社会的包摂、持続可能な発展、そして市民主体の社会づくりと言い換えることができます。
社会的連帯経済を支えるエコシステムには、各種協同組合や信用組合や共済組合といった協同組合、コミュニティビジネスやソーシャルビジネス、それらを支えるソーシャルバンク、NPOなど非営利団体や財団、フィランソロピー団体といった慈善団体、フェアトレードやマイクロクレジットといった仕組みなど様々です。つまり、社会的連帯経済とは利益追求を主たる目標とし搾取構造や環境破壊といった持続可能ではない社会システムとその経済圏ではなく、人間性の獲得や環境保全といった持続可能性を保ちながら、そこに関わる市民や労働者らが参画し、さらに連帯しながら経済をつくりあげていくことを指します。
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社会的経済と連帯経済、二つの潮流による連帯
社会的連帯経済という言葉は、「社会的経済」と「連帯経済」という二つの言葉や概念があわさった経済モデルでもあります。
それぞれが互いに違った文脈として語られてきた言葉が、2010年代前半頃から次第に合流し、社会的連帯経済という言葉として次第に定着していきました。そこには、2008年のアメリカ金融危機に端を発した危機が2011年のヨーロッパ財政危機、さらには地球温暖化などSDGsへとつながっていく地球規模での危機に対して、私たち人類が連帯してその問題に立ち向かい、新たな解決策を創造していくことが求められるなかにおいて、次第に社会的連帯経済という言葉に発展していきました。例えば、2013円11月の第1回グローバル社会的経済フォーラムで採択された「ソウル宣言」において、「新たな協働の発見」というタイトルとともにこの社会的連帯経済の精神をまとめた趣旨が作られています。
ではここで、社会的連帯経済の下となっている二つの概念について簡単に説明していきます。