広がるプラットフォーム協同組合、その背景にある雇用と労働の関係 #28
2024年、年明け早々から大地震や飛行機事故などによって心落ち着かない日々が続いていました。この度の能登半島地震により被災された皆さまに、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。能登半島地震について、Yahoo!エキスパートでもいくつか記事を挙げています。1ヶ月以上経ち、現在はボランティアの方々の受入や復興作業が始まっています。一日でも早い復興を祈っています。
さて、このニュースレターでもこれまでに紹介してきたプラットフォーム協同組合について、改めて整理をしつつ、日本においてどのような展開や議論があるかを考えてみたいと思います。
🌟point of view
広がるプラットフォーム資本主義にどう対抗するか?
改めて、なぜ、世界でプラットフォーム協同組合に注目が集まるのか。
これまでのプラットフォーム協同組合についての記事はこちら。
GoogleやUber、Airbnbなど様々な分野のプラットフォームサービスは国を超えて世界中に広がり、一企業のサービスが一定規模の経済や産業を生み出すほど大きく、プラットフォーム資本主義のようなものが形作られています。
民間の営利企業がもはや国を超えた存在として人や物や情報をつなぐ存在として巨大になるなか、時には不公正な取引やプラットフォームワーカーに対する一方的な報酬の引き下げ、ユーザーやワーカーに不利益となる急なアルゴリズムの変更など、利潤追求のためのアプローチによってトラブルや問題が各地で発生しています。プラットフォーム側の意思決定に対してユーザーやワーカーは介入することはできず、そのプラットフォームを利用し続けるためには変更された仕様や規約に合意するしかありません。
アメリカのUberであれば、依頼主からの配送の依頼に対して、プラットフォームを介して業務委託をドライバーが受けることで業務契約が成り立ちます。あくまでプラットフォームは依頼主とドライバーをつなぐ存在であり、Uberなりプラットフォームが直接雇用したドライバーを依頼主に発注しているわけではないため、プラットフォームは雇用に関わる様々な義務などは発生せず、仲介によるマージンを取っていく(さらにはそのマージンも数十%という割高だったり、手数料利率がプラットフォーム側で自由に勝手に変更できる点)ことによってビジネスを急成長させることがポイントです。
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プラットフォームに対抗する労働組合運動
こうした強大化するプラットフォーム対抗する手段は2つあります。
一つが、プラットフォーム上で働く人達(プラットフォームワーカー)たち自らが、労働組合を組成し、プラットフォームに対して労働環境の改善や報酬交渉、情報の透明化といった様々な是正をプラットフォーム側に交渉するものです。
プラットフォームワーカーらによるプラットフォームに対する運動として、訴訟などの活動だけでなく、労働組合を組成することも増えてきました。こうした運動は諸外国だけでなく日本においても起きており、デリバリーサービスUber Eatsの配達員らが労働環境の改善などの団体交渉を行うために労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成し活動を行っています。
ウーバーイーツユニオン https://www.ubereatsunion.org/
労働組合は企業の正規雇用(時には非正規雇用も)の人達が労働組合を組成することが一般的でした。しかし、プラットフォームワーカーという仕事が一般化されるなか、プラットフォームワーカーは個人事業主として業務委託を受けた雇用関係で、ワーカー個人が団体と契約関係にあるというもので、配達員同士が連帯するということはありませんでした。また、業務委託という関係から仕事中に起きた事故や怪我などの補償がされず厳しい労働環境にあるとも言えます。
かつて、年越し派遣村で派遣切りにあった人達が社会問題化されていましたが、現在起きているプラットフォームワーカーにおける問題は非正規雇用問題に続く第二の労働問題だと、東京大学で労働法を専門とする水町教授は指摘しています。それほどにプラットフォームワーカーの人口は急激に増えており、問題が噴出しているといえます。
正規雇用(非正規雇用)と業務委託者の間には、大きな違いがあり、そこにはいわゆる労働組合を規定する労働組合法上の「労働者性」があると認められるかどうかでしたが、2022年11月25日に東京都労働委員会が労働者性を認めたことからウーバーイーツ(及びウーバーイーツジャパン)に対して団体交渉を応じるよう命令が出ています。ウーバーイーツもこうした労働組合運動によってこれまでのような急激な仕様変更から多少の変化が見られるようになっていますが、まだまだウーバーイーツユニオンが掲げる改善にまでは至っておらず、引き続き団体交渉が続いています。
プラットフォームのオルタナティブとして生まれた「プラットフォーム協同組合」
プラットフォームに対抗するための労働組合は、あくまでそのプラットフォームで働くことにおいての労働環境の改善を目指しますが、それでもプラットフォーム側が素直に応じないことも少なくありません。
そこで、二つ目の手段として、プラットフォームサービスそのものを働く人達や利用者らが自らで新たに立ち上げ、共同で所有・運営・管理する動きが「プラットフォーム協同組合」なのです。ポイントは、自分たちでサービスやアプリを立ち上げ、まさにプラットフォームビジネスとして事業を推進していることです。いわば、巨大なプラットフォームの独占からデジタルプラットフォームを自分たちの手に取り戻すものといえます。