民主的な組織における最適なガバナンスとはーー代表制、参加型、熟議型、そしてソシオクラシー #26

プラットフォーム協同組合に欠かせない民主的ガバナンスシステムとは何か。今回は、改めて問うガバナンスの方法論について考えてみました。
江口晋太朗 2023.12.21
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これまでのニュースレターでは、プラットフォーム協同組合における世界的な潮流や、既存の資本主義に対して、協同組合という100年以上続く組織形態がどのようにして現代の労働環境に対して新たな可能性をもたらすのかをまとめてきました。

あらゆる経済を仲介するプラットフォームサービスの所有や管理を一部の人間が担い、巨大化するプラットフォームが帝国化することで搾取する側と搾取される側という構造(「新しい封建制」とも指摘する識者も)を生み出すのに対し、プラットフォーム協同組合では「公平な経済圏」「人間らしい労働」「労働者自らによる所有権と統治権」を実現するため、参加している組合員一人ひとりが活動に参画し、意思決定を行っていく事業体や組織体制であることがポイントです。

さらに、協同組合組織を支える基盤として民主主義、民主的な組織であることを重視するのも特徴です。通常の企業のような雇用する/される側といった非対称な立場ではなく、一定の対等関係をもとに、組織を互いに運営していくことに関わっていくことが求められます。

とはいえ、通常の企業にように明確に統治する側と統治される側に分かれていないからといって無秩序に組織が運営されているわけではありません。一定の規律や秩序のもと、組合員が主体性を持って一人一票の意思決定権を持っているという民主的な組織において、その統治方法は通常の企業とは違ったものとなっています。

いかにして組織を統治していくか、いわゆる「ガバナンス」の問題が協同組合にはついてまわってきます。プラットフォーム協同組合の運営は、私たち一人ひとりがそれまで学習してきたフレームワークや価値観を拭い捨て、新たなガバナンスのための方法論を見出さなければいけません。

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あらためて、「ガバナンス」とは何か

この「ガバナンス」という言葉の意味について、改めて整理してみましょう。

ガバナンスとは、ものすごくざっくり言うとグループの運営方法であり、かつ運営を円滑にするための運用システムといえます。一般的な企業や団体においては取締役会や理事会などのような意思決定機関が存在し、その意思決定機関によって組織の方向性や意思決定が行われ、そこから執行部隊へと下ろされていきます。

企業におけるコーポレートガバナンスという考えが誕生したのも、時に間違った意思決定を企業が行わないよう、企業経営における適正化や株主からのチェック体制のためだと言われています。逆にいえば、コーポレートガバナンスの言葉の裏には、企業は株主のためであり、株主にとってデメリットとなるような意思決定をなくそうという意味が込められています。

また、ガバナンスは企業体だけでなくあらゆるグループや団体においてガバナンスというものは存在しており、ほぼすべての人がガバナンスに関わっているといえます。それはなぜか。ガバナンスとは言うなれば「誰が何を決めるか?」「グループの意思決定をどうするか」であり、そこに私(たち)はどのように関わり、その意思決定に対する当事者意識をどう持つ事が出来るのかがガバナンスのデザインだからです。しかし、多くはガバナンスに特定の人だけが関わり、ほとんどの人は関わらない、もしくは関わる術がないことが常とされてきたようにも思えます。

もちろん、一部の人だけが決定し、他はそれに従うだけ、というのはスピード感を含めて時には必要かもしれません。しかし、そうした構造によって意思決定をする側と意思決定に従う側という存在に分かれてしまうことの問題点をこれまで挙げてきたことからも、このガバナンスのあり方を根底から見直すのも1つのアジェンダ設定といえます。

ガバナンスの方法論を模索する

ガバナンスとはグループや組織の意思決定の方法と運用システムであると考えた時、民主主義や民主的な組織におけるガバナンスシステムにおいて、多数決という意思決定方法はその1つの意思決定の方法にすぎず、多数決だけが民主的ではありません。

多数決も含めた意思の集約について『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』という本にまとまっていますので、ご興味のある方はこちらを参照してみてください。

組合員が少人数であれば、一定の顔が見える関係のなかで互いの考えや意見を言い合い、そこから意思決定を図っていくことは可能です。しかし、グループの数が増えてきたとき、さらには時間の経過とともにリーダーシップを取るもの、派閥の誕生、組合員の歴の違いによる古参と新参者による上下関係など、グループ内で自然発生的にいくつもの構造や分断が生まれてきます。

全員が参加する直接的な民主システムも、人数が多い組合員になればなるほど全員が意見を表明し意思統一を図ることは不可能に近くなってきます。一定の規模や人間が集まっても、円滑に意思決定ができすための仕組みが必要であり、そのための民主主義、民主主義システムをいかに構築するか。それが、協同組合をどう運営するか、ということと表裏一体のものとして存在しています。

プラットフォーム協同組合コンソーシアムではガバナンスの方法論やメソッドについての研究や実践が行われており、様々な協同組合が実践している民主的な組織体制や方法論の共有が図られています。

代表制、参加型、熟議型

プラットフォーム協同組合コンソーシアムに掲載されていた論考では、3つの一般的な民主主義モデル—代表制民主主義、参加型民主主義、熟議型民主主義、そしてソシオクラシーのそれぞれのモデルの特徴と、どのモデルがプラットフォーム協同組合にとって最適かを検証していました。以下、個々のモデルについて概略を見てみましょう。

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続きは、4736文字あります。
  • 合意を通じた意思決定を図るソシオクラシーとは
  • 最適なガバナンスを求めて
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