都市で農を通じたつながりや共生社会を築く

温暖化などの環境問題は、私たち自身が環境への理解や参画の方法を学び、環境を守るための方法論を知る必要があります。とはいえ、環境や自然という大きなことを考えることを難しいと感じる人がいるかもしれません。それであれば、まずは小さな一歩から、自宅や地域でできることから考えてみてはいかがでしょうか。
江口晋太朗 2021.07.19
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このコロナ禍のなか、自宅でできる小さな自然として、ガーデニングやベランダに植栽を置く人が増えてきました。

緑のある空間にいることで、脳がリフレッシュしたり、ストレスが軽減したりと、心身共にそれだけ、人間は自然のなかで、暮らし、自然と共生していくことの大切さを実感するところです。

かくいう私も、自宅での植栽やグリーンが多くなってきた昨今、前回のニュースレターでも触れたゴミ問題や第3回目のコモングッドトーク後、東京でできるゴミの課題に取り組もうと、以前から興味を持っていたコンポスト生活をしてみようと決意しました。

SDGsや環境問題への意識から循環型の生活へと切り替えようと、身近でもコンポストに取り組んでる人も増えてきました。また、おしゃれなコンポスト用品やコンポストのノウハウや情報も簡単に調べたら手に入る時代(もちろん、はまり出すとそれはそれで沼のように深いものも)、いざ、やってみようと思うと、コンポストコミュニティやコンポストに関する情報を収集する毎日となりました。

それまでは、生ゴミや調理で出た食材の端切れを、なにげなく捨てていましたが、コンポスト生活を始めて、生活の様子がまた一つ変わった気がします。

コミュニティコンポストというコモンズ

家庭でもできるコンポストの取り組みですが、家庭や世帯単位ではなく、コミュニティでコンポストを推進したり共有したりする動きもあります。

家庭で生ゴミを堆肥化しても、そこででてくる堆肥はたかがしれています。もちろん、家庭菜園レベルであればいいかもしれませんが、コンポストの本来は人と地球を第一に考え、廃棄物をなくし、持続可能な社会へとするための基盤になるものです。また、堆肥化するためのメンテナンスも、個々人でするよりも、コミュニティや共有した堆肥でみんなで取り組んだ方が合理的ともいえます。

世界のシェアリングに関する情報を発信しているShareableで「How to start a community composting project(コミュニティで始めるコンポストプロジェクト)」と題した記事が掲載されており、コミュニティでコンポストに取り組む意義や、導入方法についてまとめられていました。

コミュニティ単位のコンポストは、持続可能な食や社会のあり方に置いて必要な役割です。市民参加によるコラボレーションによって、廃棄物ゼロの経済に向けて動き出すことができます。コミュニティコンポストを運営は、ソーシャルビジネス的な要素があり、生ゴミの収集をする人もいれば、若い人や社会参画の難しい人を雇用したりすることができます。また、コミュニティコンポストを協同組合として所有する動きもでてきているそうです。

コミュニティコンポストは、学校や大学、コミュニティガーデン、都市部、郊外など様々な場所に設置されており、地域密着によって社会参画や教育的効果をもとにコミュニティを巻きこむことができます。

そして、コミュニティ単位でコンポストを推進するにあたっての導入のステップとして、①コンポストの講習を受けてコンポストのメリットは方法を学ぶこと、②どこでコンポストをつくるか、誰と連携するかを決めること、③コンポストの目的を定め、堆肥化のプロセスや適切な規模などを選択すること、④コミュニティコンポストの提唱者となること、という見出しとまとめになっています。

前提としてのコンポストそのものの知識や訓練も踏まえた上で、コミュニティコンポストの運用や管理について、いかに地域や組織的な方法で円滑にするかといった、自主規則やルールを作ることの大切さを記事では紹介しています。まさに、コンポストというものをつうじた、地域のコモンズづくりの重要性を示唆しています。

1人ではなくみんなで取り組むことで、環境への取り組みも推進されますし、コミュニティ内のコミュニケーションなども促進されるコミュニティコンポストの可能性も考えてみてもいいかもしれません。

コミュニティガーデンがつなぐ地域

コンポストのみならず、地域単位で庭や農地を共有・管理する取り組みである「コミュニティガーデン」の取り組みも広がりつつあります。

コンポストのような堆肥づくりなど、農地を共有し、収穫や庭・農地の世話などを行う「コミュニティガーデン」が広がっています。コミュニティガーデン、いわゆる「地域の庭」は、地域住民が管理する公園や農園、庭の機能を持つ場所のことです。

都市の遊休地や空き地を活用しながら、地域の人たちによる自主管理運営のもと、市民公園のような温かみのある雰囲気があります。

その潮流は1970年代頃から始まり、おもに、都市部を中心に地域の人たちが主体的に野菜づくりを育てたことから広がりを見せ始めています。

公園内でのボランティアの植栽管理よりもより主体的に参画し、収穫された野菜や果物をみんなで共有するようなことも。欧州や北米など様々な場所で、その場所ならではの個性的な取り組みが研究されています。

コミュニティガーデンと聞いて私が思い出すのは、以前、『孤立する都市、つながる街』を出版するときの研究会のメンバーである、豊中市の社協に勤めている勝部さんが中心となって取り組んでる「豊中あぐり」を視察させてもらったことがあります。

豊中あぐりのウェブサイトより
豊中あぐりのウェブサイトより

豊中あぐりは、豊中市社会福祉協議会が主導して運営している農園で、会員同士の共同運営された農園。収穫された野菜は、地域の朝市での販売や子ども食堂への食材提供、収穫物の6次産業化としてさつま芋から芋焼酎、じゃがいもやタマネギからコロッケをつくるなど、活動の幅は広がってきています。

農園を始めるきっかけは、定年を過ぎた男性の地域の居場所づくりとしてスタートしています。地域コミュニティや地域社会の担い手はこれまで女性中心で、男性は仕事や職場に出勤するという考えで過ごしてきたことから、定年後の男性の地域の居場所不足、ひいてはそれが認知症や健康寿命の促進といった問題と結びついていました。

そこで、いかにして男性の地域の居場所となる場所をつくり、そこからじょじょに地域への参画を促す取り組みはないかという考えから、「豊中あぐり」が生まれたそうです。いまでは、定年を過ぎた男性のみならず、女性も参画し、障がいを抱えた人の地域参画の場所にもなるなど、地域共生の一つとして豊中市は取り組んでいます。

コミュニティガーデンの最新事例を知る

農”業”ではなく「農」を通じ、都市におけるつながりや地域共生、そして、その先にある環境や持続可能や社会へとつなげる「コミュニティガーデン」について、7月27日開催のコモングッドトーク vol.4で深掘りしてみたいと思います。

ゲストである新保奈穂美さん(淡路景観園芸学校 景観園芸専門員)は、国内外の様々なコミュニティガーデンを調査されている方で、現場の知見をもとに、各地の事例や多様な人を招き入れるインクルーシブな仕組みづくり、都市生活者のウェルビーイングとの関わりなど、社会共生や資源循環の文脈で都市型農園がもつ可能性について、幅広く議論する時間にできたらと考えています。

このトークは、ニュースレター「コモングッドをもとめて」と学芸出版社のがくげいラボによるコラボのもと、「コモングッドトーク」というトークセッションシリーズを定期的に開催するシリーズの一環です。ニュースレターの購読者限定で、イベントレポートも掲載していきます。また、過去のトークシリーズのアーカイブ動画は、学芸出版社が運営するまち座の動画アーカイブにて閲覧することができます。

【イベント概要】

日時|2021年7月27日(火)19:00〜21:00
会場|オンライン(Zoomミーティング)
配信URL|お申し込みいたいだいた方に、peatixメールにてお知らせ致します。
参加費|一般参加:1000円
申込|https://commongood-talk4.peatix.com/view
定員|100名
主催|株式会社トーキョーベータ、学芸出版社(コモングッドをもとめて×がくげいラボ コラボ企画)

<ゲスト>
新保 奈穂美(しんぽ・なおみ)|淡路景観園芸学校 景観園芸専門員
埼玉県生まれ。2010年東京大学農学部環境資源科学課程緑地生物学専修卒業。2012年東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻修士課程、2015年同博士課程修了。博士(環境学)。2014年日本学術振興会特別研究員DC2、2015年同特別研究員PD、2016年3月より筑波大学生命環境系助教、2021年4月より現職。博士課程時にウィーン工科大学(オーストリア)に留学、ポスドク時にリンカーン大学(ニュージーランド)に研究滞在。国内外の都市型農園について意義の変遷や運営方法、都市計画上の位置付けについて研究。兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科講師。

*以下、購読者限定にて、イベントの割引コードを配布いたします。

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