ステイクホルダーが価値を見出す「地域通貨」の設計方法とは #5

地域経済を促進する手段として注目される「地域通貨」。定期的に話題になるものの、なかなか浸透しずらい要因はなにか。成功している地域通貨とそうではない地域は何が違うのか。設計方法を改めて考えてみませんか。
江口晋太朗 2021.03.06
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こんにちは。前回の社会的連帯経済の話を引き継いで、今日は、地域通貨についての最近の動向やその設計方法についてまとめてみたいと思います。

地域通貨という考え方は、1990年代後半頃から次第に注目されるようになってきました。

地域通貨とは、法定通貨ではないものの、ある目的や地域のコミュニティー内などで、法定貨幣と同等の価値あるいはまったく価値の異なるものとして発行され、その地域やコミュニティ内においてサービスや商品の対価として使用される貨幣です。日本でも、2000年代前半頃から、各地で導入が進むも、運営や流通の難しさなどが指摘されています。

すでに法定通貨が一定程度の信用のもとで流通しているなかにおいて、わざわざ使いずらい地域通貨に変換し利用するインセンティブや取引コストを増大させることに躊躇してしまうことが挙げられます。

地域通貨を運用する2つの方式

地域通貨を運用するにあたり、前提としてその運用方法には代表的な2つの方式があります。

一つが集中管理方式です。法定通貨と同様に地域通貨を発行する管理者がいて、その管理者のもとで発行する方式です。一度発行すれば、その貨幣そのものが流通するため、取引内容に関わらず流通を行うことができます。課題としては、特に、紙幣などアナログでの流通の場合、管理者が発行量を管理しないと貨幣の流通によってインフレ化してしまう点があります。

二つ目が、相互信用発行方式です。紙幣の発行はせず、地域通貨は通帳やデジタル上で数値などでカウントされ、その数字をもとに取引を行うというものです。何かの行為を行ったらポイントがもらえ、そのポイントで何か別のサービスを受けられる、といった運用方式がそれにあたります。課題としては、いちいち、取引内容を記録することが面倒だということ、また、法定通貨との交換性がないことが多く、流通するためのインセンティブ設計の難しさが挙げられます。

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過去の事例も多くはこのどちらに分類、もしくは二つを組み合わせたような方式で、それぞれの運用方式における課題や問題点があることが見えてきました。一時は、各地で地域通貨が地域コミュニティを活性化するというお題目のもと、行政主導で導入されたところも多くありません。

しかし、やはりその設計に無理があったのか、運営コストだけがかさみ、補助金が切れた途端に運用がストップしてしまうケースも多々ありました。地域通貨における継続性、流通性、インセンティブ設計など、かなり難易度の高い取り組みであることが見受けられます。2000年代後半には、「地域通貨」という言葉そのものも一時は終息しかかったように思えます。

そんな地域通貨が、改めて注目されています。その背景には、従来の紙やスタンプといったアナログでの運用から、スマホの浸透などによるデジタルでの流通があります。電子地域通貨として知られる飛騨高山の「さるぼぼコイン」もその1つで、様々なところで紹介されていることはご存じかと思います。

導入背景には、飛騨信用組合という地域金融機関主導のもと、地域経済基盤を整え、域内経済を活性化するという目的のもとに開発されています。

アプリ上では、単純な決済や送金だけでなく、行政サービスや住民通知などの市民生活に寄り添ったプラットフォームにも今やなりつつあります。(詳細は『実践から学ぶ地方創生と地域金融』をご覧ください)

運用母体が地域金融機関も相まって、法定通貨の交換の容易さや各種取引先とのネットワークをもとに導入が促進されたことなど様々な要因があげられます。また、コイン交換のために預けたお金そのものが金融機関における預金の役目をしているので、金融機関としても現金とコインに交換させることの意味は大きく、積極的な導入促進が図られました。

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